コンサートホールが格安のコンサートを開催してはいけないと思う理由

格安コンサートの弊害

コンサートホール(公共のホールに多いですね)が主催するコンサートで100円、500円、1000円のチケット代というようなコンサートがあります。

こうしたコンサートはおそらく予算が付いていて、税金を払ってくれている、区民、市民の皆さんにより芸術文化を気軽に楽しんでもらおうという趣旨で開催されているのだと思います。

ですが、こうした事業を頻繁に行ったり、習慣的に行うのは控えるべきだと思っています。

特にコンサートホール管理者がやってはいけないと思うのね。

もちろん、企画によっては・・・とは思いますが、コンサートホール主催のコンサートでこれをやってしまうと、コンサートホールを正規料金で借りる演奏家さんたちの首が絞まるのです。

助成の入らない公演が苦しむ

若手演奏家に演奏の機会を与えている、多くの人に文化に触れる機会を与えているという意味では一見素晴らしい取り組みだとは思いますが、ジワジワと業界の首を絞めている。実際その影響が出ていると私は感じています。

ホールを正規料金で借りて、一から舞台づくりをして、助成金なしで公演をする人のこと考えたことあるでしょうか?

小規模なコンサート開催は本当に大変です。

収支計算上黒字だとしてもその労力を考えれば完全に赤字って事がほとんどです。

ホールを借りてコンサートを開催するときに

新規のお客様に来て欲しいと思っていても、対価であるはずのチケット代が高いと思われてしまったりするわけです。

コンサートチケットの値決め

チケットの値段の決め方は色々ありますが、経費を座席数で割って、さらにそこに値ごろ感で微調整するという方法を取っています。

この最後の値ごろ感の微調整で値段を下げざるをえないのです。

演奏会のチラシ屋さんはこの10年で圧倒的に客層が変わりました。

昔は若手の演奏家さんの公演が多かったのですが、最近では団体様が増えました。

公演予算から考えると確かにチラシ屋さんの価格では利用できなくなってきていると思います。

ここ15年くらいでチケットの相場は1000〜1500円くらい下がっていると思います。

その原因の一つはこの公共ホールの格安コンサートの影響だと思います。

若い演奏家、小規模コンサートの主催者はとにかく集客に苦労しています。

以前、私が開催した投げ銭のコンサートの平均値は大体1000円でした。

おそらく内容を見て決めてくださいと伝えているものの、来る前から金額はそれくらい入れようと財布の用意をしてきたはずです。

決めてた以上は入れてないという人がいたと思われます。

コンサート鑑賞の予算は1000円くらいのイメージなのだと思います。

太刀打ちできない値段設定はすべきではない

安いコンサートと差別化して良いコンサートを頑張れば良いと思われるでしょうが、コンサートホールの方はコンサートホールを好条件で使える上に、その為の予算を組まれていたりするわけですから人気のある演奏者を呼んで質の高いコンサートを安く提供することができちゃったりするので、太刀打ちできません。

これって、卸業者が卸値で消費者に商品を売ってしまって、小売業者が困るというのと似ていると思うのです。

例えば、これまで多くのレストランがピザ1枚約1500円で売っていたのに、その隣に市民の皆さんのために1枚100円で出すお店を公共事業としてやりましょう!当然味も一流です!っていったらどうでしょう?

お客さんは1500円でピザを食べるでしょうかね。

私たちにとってはそういう事が起きているわけです。

どうしたら良いか

助成金が入っていようが、コンサートホール代金がかからなかろうが、
出演料、総経費、会場代の正規料金など足して座席数で割った金額でトントンになるくらいがチケット代の最低ラインだと思うわけです。

業界にデフレを起こしてどうする。

アマチュアの団体さんもよくホールを利用されると思いますがこうした団体さんが無料または格安チケットで開催されるのは何の問題もないと思っています。

しかし公演を成り立たせなくてはいけない公演も沢山あるわけです。

小規模公演など中途半端なものは公共のホールからは無くなっても良いという判断なのかしらね。そういう風にも取れる取り組みです。

寂しいですね。

新しい企画、新しい演奏家が力をつけるにはなくてはならないのが公共のホールだと思います。

確かに東京の私設の豪華なホールが借りれたら良いですけど。。。
そういうところならチケット代の相場も高くなりますが、新しい企画、まだファンの少ない演奏家にはとても難しいと思います。

今回の件は、ホールの管理と文化振興は切り離して考えるべきだと思います。

公演は公募したら良いと思います。

そうすると企画力は上がりますし、
本当に実力がある若手の演奏家の、経験値も上がります。

そういう公演は年1〜2回くらいお祭り的に特別扱いとして無料で開催したら良いと思います。

それで市民の皆さんにも良質なものを楽しんでもらう事ができると思うのです。

私はコンサートのチケット代の水準を上げたい。

当然それに見合う公演を提供することは大前提ではありますが、リサイタルなどなら4000円〜6000円。大規模な公演なら8000〜10000円くらいになれば、安定した運営ができると思います。

無駄に下がってしまったチケット代の感覚は戻したいと考えています。